とある愛香家の日記

香水に対する偏愛ばかりを書き連ねております

アンボワバニール(セルジュ・ルタンス)

「バニラの木」

 

私の人生で出会った中で一番お洒落な中年の男性が、「冬はルタンスのアンボワバニールをつける」とおっしゃっていました。

丸眼鏡、モードなヘアスタイル、チェックのブレザー、そして腕につけた趣味の良い時計。マスキュリンな香りを選ばず、あえてアンボワバニールをつける。ああこの方がこの香りをつけるのは本当にハマるな、と思いました。

 

アステカ帝国の財宝のひとつ、バニラ。
その純粋にして高貴、そして甘美なバニラの芳香は、
ひとを魅了し、とりこにし、
永遠に自分だけのものにしたいという欲望をかきたてる。
その宝物のようなバニラの魅力を、白檀の箱にそっと詰めて。」

(公式サイトより)

 

メキシカンブラックバニラのエッセンス、白檀、甘草、ココナッツミルク

 

つけた瞬間、クレームブリュレにたっぷりブランデーをかけたような匂いがぶわっと広がります。

その後、ほどなくして白檀が出てくるものの、最初はココナッツミルクのベールがかけられており、そのベール越しに木を触っているような気持ちになります。その後ベールは剥がされ、直接木を触りながら鼻を押し当て、材木系の香りを嗅いでいるような感覚へと変わります。

 

ネットでクチコミを読んでいると、「家でつける」「寝る時につける」という方が非常に多い(というかそういう人しかいない)のですが、私にとってこの香水は「背中を押してくれる香り」であり、だからこそ外出時につけたい。オフィスにつけて行けるようなタイプではなく、完全にプライベート向けです。

わりと濃厚なので、下半身に控えめにつけて全身を包み込むようにするのがお勧め。

(なお、ルタンスの香水は強いのか、それとも拡散性が高いのか、はたまた個性的すぎて鼻につきやすいのか、アンボワバニールもロルフェリンも家族には不評でした。残念)

 

うんと寒い冬の日、アンボワバニールを纏い、ウールのコートを着て、街を歩く。バニラとサンダルウッドの香りに温かくくるまれ、ひとり愉悦に浸るのが良いように思います。