とある愛香家の日記

香水に対する偏愛ばかりを書き連ねております

ROSE PRIVÉE(L'Artisan Parfumeur)

パフューマリーの聖地、グラースを象徴する花「ローズ ドゥ メ(5月のバラ)」を称えるフレグランス。

ローズ ドゥ メは5月の初旬から約1ヶ月しか摘み取ることができないバラです。

 

トップ:グリーンマンダリン、バイオレットリーフ、バジル、ブラックカラント

ハート:ローズ ドゥ メのアブソリュートカーネーションマグノリアライラック

ラスト:ヘイ(干し草)、パチュリ、ムスク、シプレアコード

 

「ローズ プリヴェ」=”private rose”.

公式サイトによると、

「心躍らせるフレッシュな華やぎ、フレンチシックを思わせる洗練、地中海沿岸の明るい太陽がそそぐ南仏へと誘う臨場感」

ROSE PRIVÉE | ラルチザン パフューム公式サイト | L'Artisan Parfumeur

とありますが、どちらかというと晴れよりも曇りの日を思わせる調香で、陰のある香りだと感じます。薔薇が華やかにたくさん咲き乱れているというよりは、プライベートな庭で、たくさんの花の中ひっそり咲いている…というぐらい、ローズは控えめです。

 

調香師はベルトラン・ドゥショフールとその弟子ステファニー・バクーシュ。2015年発表ですが、既に廃盤となっています。

ラルチザンは改廃の多いブランドで、消費者としては常に廃盤の不安を抱えながらも次々と新作が出るのはエキサイティングでもありますが、その毎回かかる高い開発費はきっと他の製品の高い売値で回収して(後ろから狙撃される音

…一期一会を楽しむのが、ラルチザンとの良い付き合い方なのだと割り切ることにします。

ODALISQUE(NICOLAÏ PARFUMEUR-CREATEUR)

NICOLAÏ PARFUMEUR-CREATEUR(パルファムドニコライ)は1989年に調香師Patricia de Nicolaïさん(女性)とその夫Jean-Louis Michauさんによって創業されました。当時は「調香師は男性がやるもの」という時代だったそうです。創業当初から「最高品質と完全なる創造の自由」を信条とし、マーケットに左右されない卓越したエレガンスを維持し続けていると自負しています。これはPatriciaさんの母方、ゲラン家の哲学とのこと。最近は息子のAxel de Nicolaïさんも事業を手伝っているようです。

日本では以前代理店があったようですが、現在はありません。ただしオンラインストアは全世界発送に対応しています。値段もメゾンフレグランスとしてはリーズナブルで、30mlサイズもあるのが嬉しいところです。

 

香調はシプレ。トップはマンダリンとベルガモットですが、マンダリン(蜜柑)が強いのか、いかにもジューシーなシトラスが明るく弾けるというよりは、熟れた桃を思わせる香りがフルーティーに上りたちます。

トップが過ぎ去るとリリーオブザバレー、ジャスミン、イリスのフローラルへ。ラストはオークモスとムスク…というのが明かされている香りのピラミッドなのですが、私の肌ではずっとフルーティーな「グリーン要素たっぷりの蜜柑✖️桃」が最後まで香り続けます。謎です。シプレですがパチュリが入っていないためか、つけて数時間経った後も重みは出てきません。

 

1989年発に発表され、当時のメインストリームがどのようであったかはわからないのですが、30年近く経った2018年現在つけてみると、かなり個性的に感じます。この独特なフルーティーな香りを好きになれるかは人に寄ると思います。海外のクチコミサイトを見ると絶賛している人とボロクソに言っている人と真っ二つに分かれており、後者に関してはかなりひどい言われようです。

ベルガモットが最高」「リリーオブザバレーの香水の最高峰」「素晴らしいシプレ」と形容している人もいれば、「ベルガモットどこ?」「リリーオブザバレーもジャスミンも見当たらないんだけど?」「シプレにも感じないよ」と私みたいなことを言う人もいるので、つける人の肌によって全く香り立ちは異なるのかもしれません。可能であればサンプルなどで少量から試されるのをお勧めいたします。

  

ちなみに、オダリスクとはトルコのハレム(後宮)にいる女奴隷や寵姫のことで、19世紀初頭、フランスの画家達(アングルやマティスルノワールなど)が好んで題材にしました。「オダリスク」でGoogle画像検索すると、「そんな格好してたら風邪引きますよ…」というような色白もち肌の女性が山のように出てきます。「ほんまにトルコの後宮にこんな人達いたんかいな!フランス人の変な妄想ちゃうか」とエセ関西弁でツッコミたくなること必至です。

 

個人的には、ニコライの最近の香りも試してみたいと思っています。特にCAP NÉROLI(EDT)はローズマリーやミントなども入っているネロリとのこと、是非一度嗅いでみたいです。パリにブティックがあるそうなのですが、残念ながらパリに行く予定がありません…。いつの日か!

 

追記2018.8.8】

2018年8月16日にオープンのNOSE SHOP銀座店(東急プラザ銀座3階)でニコライの取り扱いが開始になると発表がありました。実際に手にとって見ることができるのは嬉しいですね。

Huemul(fueguia1833)

「清らかなアンデス山脈を力強く走り抜ける、美しいゲルマジカのように…」

ゲルマジカは絶滅危惧種らしく、以下サイトのパタゴニア旅行記では「幻のゲルマジカ」と書かれています。写真も見られます↓

www.kaze-travel.co.jp



いやーパタゴニア一回行ってみたいですね‼︎

フエムルはストーリーがあると言うよりは、「元々は動物性香料であるムスクを、植物性香料で表現してみたらこうなりました」という作品です。
ムスクは麝香とも呼ばれ、雄のジャコウジカの腹部にある香嚢(ジャコウ腺)から得られる分泌物を乾燥した香料、生薬の一種です。最近では動物保護の観点から合成香料にとって代わられていることが多いと聞きます。

 

明かされている香料は
1.Musk/Exaltone family 2.Massoia/Cryptocaria massoia 3.Jasmine/Jasmine lactone

WikipediaによるとMassoiaは樹皮から取られる香料で、だいたいどんな香りかと言うとココナッツ、クリーミー、ミルキーで、希釈するとクリーミー、ココナッツ、グリーン、僅かにフルーティーであるそうです。

(Huemul全体が、まさしくそのように香ります)

Massoia lactone - Wikipedia

 

ジャスミンも使われていますが、フローラルとして主だって前に出ることはなく、全てが渾然一体となって香ります。

店員さん曰く「つける人の体臭なのかどうかわからないように香る」とのこと、確かに身体に何らかの色をつけ加えるというよりは、まさに肌が「匂い立つ」ように感じます。

面白い嗅覚体験ができますので、もしお店に行く機会があれば、ぜひ肌の上で試されることをお勧めいたします。とはいえ、フエギア1833のお店では目の前に立ち並ぶフラスコに目移りしてしまい、腕が何本あっても足りないように感じてしまうことが多いのですが…

ANOTHER13(LE LABO)

ルラボがイギリスの雑誌「アナザーマガジン」からの依頼を受けて作った香りです。

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「アナザーマガジン」のチーフエディターであるジェファーソンハックと、パリの有名セレクトショップコレット」のサラとのコラボレーションで誕生しました。以前は「コレット」限定品でしたが2017年12月に閉店、その後ルラボのブティックでも手に入るようになりました。

アニマルムスクの合成香料アンブロキサンがメインで、その他ジャスミン、モスやアンブレットシードアプソリュートが使われています。

こちらの記事によれば

blog.vogue.co.jp

洋梨、林檎も使われているとのこと。
(公式サイトにはその記載はありません)

店員さん曰く「ムエット上ではアンブロキサンが無機質に香る。実際に肌に乗せてみると、甘く変わる人と、無機質なままの人の2つに分かれる」のだそうで、私の場合は「メタリックなAMBRETTE9」になりました。

ルラボのAMBRETTE9といえば、植物性ムスクのアンブレットグレインが使われた、どこか赤ちゃんを思わせるような、ほわほわとしたフレグランスです。

heleninthegarden.hatenablog.jp

AMBRETTE9にも洋梨や林檎が使われているため、2つの香りが似ているように感じるのも不思議ではないのかもしれません。

私の肌では「スキンフレグランス+α」の香り方をしました。「何か新しいことを始める時の、シャキッとした気持ちを思い起こさせてくれる」とは店員さんの言で、このキーンとしたメタリック感がどこか新鮮な気持ちにさせてくれます。

店員さん曰く「合成香料盛り盛り」のこの香り、賦香率は40%だそうで、表記はEDPですが実質はパルファム(15%以上のもの)ということでしょうか。持続力がものすごく、シャワーを浴びても落ちない(ただし、拡散性は低いので香害にはなりにくそうです)とのことで、そこが好き嫌いの分かれるポイントかもしれません。

LES PARFUMS LOUIS VUITTON(ルイ・ヴィトン)

ルイ・ヴィトンの香水シリーズ、「LES PARFUMS LOUIS VUITTON」は旅がテーマとなっています。2016年9月、ブランドとしては70年ぶりにフレグランスを発表し、話題を呼びました。販売する店舗も限られ、発売当初は香水を見るために人が押し寄せたという話も聞いたことがあります。
今回は全8種類(うち1種類は新作)をアルファベット順にご紹介します。全て時間が経ったムエットでの感想ですので、ラストノートがメインになるかもしれませんが、ご了承ください。

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関西では阪急うめだで取り扱い有り。お願いすると、ムエットを薄い紙の袋(写真)に入れてもらえます。あまり香りを封じ込める感じではないので、気になる方はプラスチック製の透明のムエット袋を持参してもいいかもしれません。

 

・APOGÉE(アポジェ)
スズランがメインの香り。「一番爽やかなもの」として店員さんからご紹介いただきました。スズラン以外では、ジャスミンマグノリア、バラが使われています。ガイヤックウッドとサンダルウッドが使われており、フローラルな中にもスモーキーさが感じられます。公式サイトによると、広大な自然への逃避行をイメージしているとのこと。フランス語辞書を引いてみると、Apogéeとは「頂点」「最高潮」「クライマックス」などという意味のようです。

 

・CONTRE MOI(コントロモワ)
バニラの香り。マダガスカルタヒチ産のバニラ、オレンジフラワー、ローズ、マグノリア、ビターココアが使われています。一見バニラとしてはフレッシュにも思えますが、公式曰く「旅路で出逢う2人の男女を彷彿させる」ということで、情熱と官能を感じさせ、クラクラします。どうでも良い話ですが、旅先で出会う人は「同じ行き先を選ぶ」という点で自分と同じような興味・関心がありそうですね。既に旅でテンション上がっている状態での出会いで、冷静な判断には欠けるかもしれませんけど。上手くいくといいですね。

 

・DANS LA PEAU(ダン・ラ・ポー)
ナチュラルレザーがメインの香り。アプリコット、グラース産ジャスミンと中国産サンバック、ナルシス、ムスク。お店でトップを嗅いだ際は、同じレザーでも後にご紹介するMILLE FEUXよりは重たく感じました。ラストがムスクだからなのか、ムエットに残った香りはフルーティーからは一転、大人の渋さのある、落ち着いた静かな香りになっています。

 

・LE JOUR SE LÈVE(ルジュール・スレーヴ)
最新作。旅立ちの直前の夜明けをイメージした香りで、マンダリンがメイン。ジャスミンサンバックとブラックカラントが使われた、明るさを感じさせる香りです。トップで私は葉っぱの香りを感じたように思ったのですが、お店の人曰く、最初に香るマンダリンの皮の部分をそう感じるのではないか、ということでした。

 

・MATIÈRE NOIRE(マティエール・ノワール)
漆黒の深い森、神秘の世界へと誘う香水です。パチョリ、アガーウッド(沈香)、ブラックカラント、白いナルシスやジャスミン。コレクションの中ではダントツでミステリアスです。

 

・MILLE FEUX(ミルフー)
ラズベリーとレザーの組み合わせ。レザーはレザーでも、これはヌメ革なのだそうです。調香師がルイ・ヴィトンのアトリエを訪れた際、ラズベリー色のバッグが目に入ったことから、この組み合わせを思いついたのだとか。他にはオスマンサス、イリス、サフラン。これは肌に乗せたのですが、かなりフルーティーです。レザー自体はDANS LA PEAUよりも軽めだと感じましたが、フルーツがどっしりと香るので全体としては重みがあります。

 

・ROSE DES VENTS(ローズ・デ・ヴァン)
グラースのローズ・ドゥ・メ(5月にしか咲かないバラ)を低温でじっくり抽出した香水。イリス、シダー、ペッパーが使われています。 割と王道の、可憐な薔薇香水であると感じました。

 

・TURBULENCES(タービュランス)
チュベローズの香り。Turbulencesとは、フランス語で「乱流」のこと。「一目で恋に落ちる衝動」からインスパイアされています。乱気流の中を飛んでいくようなイメージなのでしょうか。店員さん曰く、他のブランドのチュベローズ香水よりも甘みは少なめ。

 


単純に香調だけで見ると、フルーティーな色合いの強い物が多いと思います。

旅行鞄から身を起こしたブランドの香水が、どれも旅をテーマにしたものだと知り、納得しました。
調香師ジャック・キャヴァリエ自身はマティエールノワールを、奥様はローズデヴァンをお使いなのだとか。

香り立ちは強くて濃いめ。ハイブランドのバッグには「持っているだけでオーラを放つ」部分があると思っていますが、それに似た感じです。群衆に紛れ込むための香りではありません。
他のハイブランドで言うと、バッグで言えばエルメスやグッチ、宝石で言えばブルガリやヴァンクリーフ&アーペルなどがもう少し手に取りやすい価格の香水(他の商品に比べれば…ですが。モノによってはディスカウントに流出しているものも有り)を出しているのに比べ、ルイ・ヴィトンは100ml32,400円と、バッグに見合ったお値段です。ハイブランドの商品に対して、コスパ云々言うのは野暮なのかもしれません。

トラベルセドゥボスフォール(ラルチザン パフューム)

かつて「イスタンブールの空」と呼ばれていた作品(EDP)です。これは廃盤にはなっておらず、今も手に入ります。

調香師ベルトラン・ドゥショフールの今回の旅先は、トルコのイスタンブール
西洋と東洋が交差する場所。まるでスーク(市場)に迷い込んだような体験ができるフレグランスです。(行ったことありませんが)

ヘッドノート :青りんご、ザクロ、ジンジャー、サフラン
ハートノート :アイリス、チューリップ、ローズ、ピスタチオ、ターキッシュデライト(ロクム)
ベースノート :ムスク、アトラス産シダーウッド、ベンゾイン

ミドルに使われているチューリップは、宮殿に咲き誇っているものをイメージしてのことだとか。

林檎やザクロのフルーティーな香りで始まります。やがてアイリスのパウダリーさや、ピスタチオの独特の匂い(美味しいですよね)も出てきます。トップから甘いのですが、割と軽やかで、不思議と心の落ち着きを感じます。ターキッシュデライト(ロクム)というトルコのお菓子の匂いが使われているからか、この香水をつけながらコーヒーを飲んでいたら何とも言えずマッチしました(笑)
ラストはイスタンブールの夕暮れを表現。穏やかなムスクが広がり、夕陽が街を染め上げていくのまで感じさせるのは、見事としか言いようがありません。私はボスフォラス海峡を前に、夕陽を眺めている場面を想像しました。

いつかイスタンブールにも行ってみたいものです!

フルールドリアン(ラルチザン パフューム)

調香師ベルトラン・ドゥショフール御大が今回旅行したのは中米パナマの島。雨季の熱帯雨林に咲く、幻の花をイメージ。残念ながら廃盤です。

 

・トップ:グアバの木の花(グリーン、フルーティーノート)、水の香り(オゾニックノート)
・ミドル:つる植物の花と樹液(モクレン、チュベルーズ、インドソケイ)、つる植物の木(ベチバー、ガイヤクウッド、杉)
・ラスト:トロピカルな森の下草(パチュリ、コケ)

インドソケイとは、プルメリアのことだそうです。いかにも南国!というイメージの花ですよね。

 

まるで、ジャングルの樹々からしたたる雨の雫が想像できるようです。
オゾニックノートは新鮮な空気を呼び込むようで、「蒸し暑い」フレグランスにはなっていないと感じます。
トップで水の匂いを感じた後はぐっと落ち着きます。色で言えば、明るいトロピカルな青緑から、深緑へと変わります。あまりモクレンやチュベローズの濃厚さは感じません。

個人的には、春〜初夏の雨の日に纏いたい香りです。