とある愛香家の日記

香水に対する偏愛ばかりを書き連ねております

ANOTHER13(LE LABO)

ルラボがイギリスの雑誌「アナザーマガジン」からの依頼を受けて作った香りです。

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「アナザーマガジン」のチーフエディターであるジェファーソンハックと、パリの有名セレクトショップコレット」のサラとのコラボレーションで誕生しました。以前は「コレット」限定品でしたが2017年12月に閉店、その後ルラボのブティックでも手に入るようになりました。

アニマルムスクの合成香料アンブロキサンがメインで、その他ジャスミン、モスやアンブレットシードアプソリュートが使われています。

こちらの記事によれば

blog.vogue.co.jp

洋梨、林檎も使われているとのこと。
(公式サイトにはその記載はありません)

店員さん曰く「ムエット上ではアンブロキサンが無機質に香る。実際に肌に乗せてみると、甘く変わる人と、無機質なままの人の2つに分かれる」のだそうで、私の場合は「メタリックなAMBRETTE9」になりました。

ルラボのAMBRETTE9といえば、植物性ムスクのアンブレットグレインが使われた、どこか赤ちゃんを思わせるような、ほわほわとしたフレグランスです。

heleninthegarden.hatenablog.jp

AMBRETTE9にも洋梨や林檎が使われているため、2つの香りが似ているように感じるのも不思議ではないのかもしれません。

私の肌では「スキンフレグランス+α」の香り方をしました。「何か新しいことを始める時の、シャキッとした気持ちを思い起こさせてくれる」とは店員さんの言で、このキーンとしたメタリック感がどこか新鮮な気持ちにさせてくれます。

店員さん曰く「合成香料盛り盛り」のこの香り、賦香率は40%だそうで、表記はEDPですが実質はパルファム(15%以上のもの)ということでしょうか。持続力がものすごく、シャワーを浴びても落ちない(ただし、拡散性は低いので香害にはなりにくそうです)とのことで、そこが好き嫌いの分かれるポイントかもしれません。

LES PARFUMS LOUIS VUITTON(ルイ・ヴィトン)

ルイ・ヴィトンの香水シリーズ、「LES PARFUMS LOUIS VUITTON」は旅がテーマとなっています。2016年9月、ブランドとしては70年ぶりにフレグランスを発表し、話題を呼びました。販売する店舗も限られ、発売当初は香水を見るために人が押し寄せたという話も聞いたことがあります。
今回は全8種類(うち1種類は新作)をアルファベット順にご紹介します。全て時間が経ったムエットでの感想ですので、ラストノートがメインになるかもしれませんが、ご了承ください。

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関西では阪急うめだで取り扱い有り。お願いすると、ムエットを薄い紙の袋(写真)に入れてもらえます。あまり香りを封じ込める感じではないので、気になる方はプラスチック製の透明のムエット袋を持参してもいいかもしれません。

 

・APOGÉE(アポジェ)
スズランがメインの香り。「一番爽やかなもの」として店員さんからご紹介いただきました。スズラン以外では、ジャスミンマグノリア、バラが使われています。ガイヤックウッドとサンダルウッドが使われており、フローラルな中にもスモーキーさが感じられます。公式サイトによると、広大な自然への逃避行をイメージしているとのこと。フランス語辞書を引いてみると、Apogéeとは「頂点」「最高潮」「クライマックス」などという意味のようです。

 

・CONTRE MOI(コントロモワ)
バニラの香り。マダガスカルタヒチ産のバニラ、オレンジフラワー、ローズ、マグノリア、ビターココアが使われています。一見バニラとしてはフレッシュにも思えますが、公式曰く「旅路で出逢う2人の男女を彷彿させる」ということで、情熱と官能を感じさせ、クラクラします。どうでも良い話ですが、旅先で出会う人は「同じ行き先を選ぶ」という点で自分と同じような興味・関心がありそうですね。既に旅でテンション上がっている状態での出会いで、冷静な判断には欠けるかもしれませんけど。上手くいくといいですね。

 

・DANS LA PEAU(ダン・ラ・ポー)
ナチュラルレザーがメインの香り。アプリコット、グラース産ジャスミンと中国産サンバック、ナルシス、ムスク。お店でトップを嗅いだ際は、同じレザーでも後にご紹介するMILLE FEUXよりは重たく感じました。ラストがムスクだからなのか、ムエットに残った香りはフルーティーからは一転、大人の渋さのある、落ち着いた静かな香りになっています。

 

・LE JOUR SE LÈVE(ルジュール・スレーヴ)
最新作。旅立ちの直前の夜明けをイメージした香りで、マンダリンがメイン。ジャスミンサンバックとブラックカラントが使われた、明るさを感じさせる香りです。トップで私は葉っぱの香りを感じたように思ったのですが、お店の人曰く、最初に香るマンダリンの皮の部分をそう感じるのではないか、ということでした。

 

・MATIÈRE NOIRE(マティエール・ノワール)
漆黒の深い森、神秘の世界へと誘う香水です。パチョリ、アガーウッド(沈香)、ブラックカラント、白いナルシスやジャスミン。コレクションの中ではダントツでミステリアスです。

 

・MILLE FEUX(ミルフー)
ラズベリーとレザーの組み合わせ。レザーはレザーでも、これはヌメ革なのだそうです。調香師がルイ・ヴィトンのアトリエを訪れた際、ラズベリー色のバッグが目に入ったことから、この組み合わせを思いついたのだとか。他にはオスマンサス、イリス、サフラン。これは肌に乗せたのですが、かなりフルーティーです。レザー自体はDANS LA PEAUよりも軽めだと感じましたが、フルーツがどっしりと香るので全体としては重みがあります。

 

・ROSE DES VENTS(ローズ・デ・ヴァン)
グラースのローズ・ドゥ・メ(5月にしか咲かないバラ)を低温でじっくり抽出した香水。イリス、シダー、ペッパーが使われています。 割と王道の、可憐な薔薇香水であると感じました。

 

・TURBULENCES(タービュランス)
チュベローズの香り。Turbulencesとは、フランス語で「乱流」のこと。「一目で恋に落ちる衝動」からインスパイアされています。乱気流の中を飛んでいくようなイメージなのでしょうか。店員さん曰く、他のブランドのチュベローズ香水よりも甘みは少なめ。

 


単純に香調だけで見ると、フルーティーな色合いの強い物が多いと思います。

旅行鞄から身を起こしたブランドの香水が、どれも旅をテーマにしたものだと知り、納得しました。
調香師ジャック・キャヴァリエ自身はマティエールノワールを、奥様はローズデヴァンをお使いなのだとか。

香り立ちは強くて濃いめ。ハイブランドのバッグには「持っているだけでオーラを放つ」部分があると思っていますが、それに似た感じです。群衆に紛れ込むための香りではありません。
他のハイブランドで言うと、バッグで言えばエルメスやグッチ、宝石で言えばブルガリやヴァンクリーフ&アーペルなどがもう少し手に取りやすい価格の香水(他の商品に比べれば…ですが。モノによってはディスカウントに流出しているものも有り)を出しているのに比べ、ルイ・ヴィトンは100ml32,400円と、バッグに見合ったお値段です。ハイブランドの商品に対して、コスパ云々言うのは野暮なのかもしれません。

トラベルセドゥボスフォール(ラルチザン パフューム)

かつて「イスタンブールの空」と呼ばれていた作品(EDP)です。これは廃盤にはなっておらず、今も手に入ります。

調香師ベルトラン・ドゥショフールの今回の旅先は、トルコのイスタンブール
西洋と東洋が交差する場所。まるでスーク(市場)に迷い込んだような体験ができるフレグランスです。(行ったことありませんが)

ヘッドノート :青りんご、ザクロ、ジンジャー、サフラン
ハートノート :アイリス、チューリップ、ローズ、ピスタチオ、ターキッシュデライト(ロクム)
ベースノート :ムスク、アトラス産シダーウッド、ベンゾイン

ミドルに使われているチューリップは、宮殿に咲き誇っているものをイメージしてのことだとか。

林檎やザクロのフルーティーな香りで始まります。やがてアイリスのパウダリーさや、ピスタチオの独特の匂い(美味しいですよね)も出てきます。トップから甘いのですが、割と軽やかで、不思議と心の落ち着きを感じます。ターキッシュデライト(ロクム)というトルコのお菓子の匂いが使われているからか、この香水をつけながらコーヒーを飲んでいたら何とも言えずマッチしました(笑)
ラストはイスタンブールの夕暮れを表現。穏やかなムスクが広がり、夕陽が街を染め上げていくのまで感じさせるのは、見事としか言いようがありません。私はボスフォラス海峡を前に、夕陽を眺めている場面を想像しました。

いつかイスタンブールにも行ってみたいものです!

フルールドリアン(ラルチザン パフューム)

調香師ベルトラン・ドゥショフール御大が今回旅行したのは中米パナマの島。雨季の熱帯雨林に咲く、幻の花をイメージ。残念ながら廃盤です。

 

・トップ:グアバの木の花(グリーン、フルーティーノート)、水の香り(オゾニックノート)
・ミドル:つる植物の花と樹液(モクレン、チュベルーズ、インドソケイ)、つる植物の木(ベチバー、ガイヤクウッド、杉)
・ラスト:トロピカルな森の下草(パチュリ、コケ)

インドソケイとは、プルメリアのことだそうです。いかにも南国!というイメージの花ですよね。

 

まるで、ジャングルの樹々からしたたる雨の雫が想像できるようです。
オゾニックノートは新鮮な空気を呼び込むようで、「蒸し暑い」フレグランスにはなっていないと感じます。
トップで水の匂いを感じた後はぐっと落ち着きます。色で言えば、明るいトロピカルな青緑から、深緑へと変わります。あまりモクレンやチュベローズの濃厚さは感じません。

個人的には、春〜初夏の雨の日に纏いたい香りです。

フーアブサン(ラルチザン パフューム)

2006年発表のEDP。禁断の酒、アブサンをテーマにした香水です。アブサンはニガヨモギやアニス、ウイキョウなどのハーブやスパイスで作られるリキュールで、芸術家含め多数の中毒者を出したことから一時期禁止されるまでに至りました。
(現在は幻覚をもたらすとされた成分が一定量以下であれば製造が解禁されているそうです。飲んだことはありませんが)


・トップ: ニガヨモギ、アンゼリカ、カシスのつぼみ
・ハート:スターアニス、ペッパー、パチュリ、クローブナツメグ、ジンジャー
・ベース:松葉、シスタス、バルサムモミ
<調香師 :オリヴィア・ジャコベッティ>

 

トップから薬草の匂いがします。アブサンはその色から別名グリーン・フェアリーとも呼ばれ、飲むと幻覚で緑の妖精が見えるという伝説もあるそうです。確かに、妖精が見えてもおかしくないような、幻惑的なオープニングです。
やがてトップのグリーンの下から出てくるのは、カルダモンやアニスなどのスパイス。全体はクールな印象なのに温かみがあるという二面性があります。私は氷を入れたアブサンを飲みながら、心の中では内なる炎が燃え続けているような情景を思い浮かべます。
やがてスパイスが落ち着くと、ラストはしっとりとした針葉樹系の大人のウッディノートになります。この滑らかさが非常に官能的です。

 

好みは分かれるかもしれませんが、トップからラストまでの変化が刺激的であり、薬草系でユニークなものを探している方にはお勧めの香水です。

アルード(ラルチザン パフューム)

アラビア半島の砂漠における黄昏をイメージした香水。黄金やミルラを運ぶキャラバン、全てが金色に染まる夕暮れを表現した香り。

AL OUDは2009年発表のEDP。調香師はベルトラン・ドゥショフールです。最近はウードの香り大ブレイク中の感がありますが、2009年頃から既に流行していたのでしょうか。各メゾン、中東ウケを狙っての戦略と聞きます。

 

こちらのサイトによりますと

BASB Magazine ドバイ 003 嗅ぐと究極の癒し効果!ドバイ流「人とかぶらない」伝統的フレグランス2つ


ウードの日本語名は「沈香」。アガーの木が菌に感染すると、傷を癒す為に芳香を放つ樹脂を出し始め、その部分の木片がウードとして利用されるそうです。マレーシア、ミャンマー、インドが人気の産地とのこと。中東というよりは東南・南アジアで採れるんですね。
かつてアラブの王族しか使用が許されなかったため、”香りのダイヤモンド”という別名があるそうです。

使われている香料は(既に廃盤となっているため、楽天のページから引用)
https://item.rakuten.co.jp/aromalab/lp11007608/
・ヘッドノート / クミン、カルダモン、ピンクペッパー、ドライフルーツ(デーツ)
・ハートノート / ネロリ、ローズ、アイリス、インセンス、ミルラ
・ベースノート / ウードウッド、サンダルウッド、レザーノート、アニマルノート、アトラス産シダーウッド、パチュリ、バニラ、トンカビーンズ
です。

 

ウードはベースノートに配置されてはいますが、最初からはっきりと香ります。つけた瞬間、ピュアディスタンスのブラックを思い出しました。ブラックは一切香料が明かされていませんが、ウードも使われているのでしょうか。ブラックの影響か、私は黒く塗られた漆を想像してしまいました。
ウードといえば癖のある香りというイメージですが、立ち上る香気は意外にも心地よく感じられます。しかしこれを心地よいと感じるかは人によりけりで、香水を使わない人にとっては結構ハードルが高いかもしれません。
トップはクミン、カルダモンやピンクペッパーが香りスパイシーですが、その後鉛筆削り(黒鉛部分も含め)を思わせるシダーウッドが香ります。さらに少し時間が経つとふわふわとしたウッディ・ムスクに変化します。つけてから1時間ほど経って、ドライフルーツなのかトンカビーンなのか、少々甘みが出てきますが、すぐに甘みは身を潜め、ラストはレザーとパチュリのマニッシュな香り。あまりアニマリックには感じませんでした。

 

いつかアラビア半島にも行ってみたいものです!

クールドベチバーサクレ(ラルチザン パフューム)

名前は「聖なるベチバーの心」。残念ながら廃盤となってしまっています。
iBeautyStoreによると、力強く野生的なハイチ産ベチバーと、優美でフレッシュなロベルテ産ベチバーの2種類が使われています。

トップ:ベルガモット、ブラッドオレンジ、ブラックティ、ジンジャー、ピンクペッパー
ハート:インセンス、ローズ、イリス、スミレ、ベチバー
ベース:ベチバー、アンブレットシード、レザーノート、ラブダナムサンダルウッド、ガイヤクウッド、トンカビーン、バニラ
(https://www.ibeautystore.com/products/1001718
を参照しました)
調香師:Karine Vinchon(fragranticaより)

トップはシトラスとブラックティーがジンジャーやピンクペッパーの温かみとともに香ります。その背後にこんもりとしたベチバーの匂い。
トップが過ぎるとローズなどのフローラルがインセンスとともに花開き、(ベチバーというと男性向け香水のイメージが強いですが)女性的ともとれる優美な香りが広がります。イリス、スミレも使われているためパウダリックな趣も若干あり、心から寛ぐことができます。このミドルの美しいこと!
ローズが落ち着くと、トンカビーンの甘露が感じられるベチバーとサンダルウッドに着地します。

香り立ちは他のラルチザンの作品と同じく終始上品で、声高に香ることはありません。

この香水の美しさには心を掴まれました。かえすがえすも廃盤が惜しい作品です。